<男!あばれはっちゃく名場面>

第63話家出のコーチだ(秘)作戦(オリジナル放送日昭和56年6月13日)

(長太郎の兄貴信一郎はガールフレンド洋子さんと仲が良いことをクラスメートに妬まれ、中傷のビラを撒かれてしまう。先生から睨まれ退学の不安を感じた信一郎は洋子さんに迷惑をかけないよう、転校を訴えるが父ちゃんに反対され、家出を企てる。クラスメートの犯人を掴んだ長太郎は、兄貴の中学に乗り込み啖呵をきる)

兄貴はイシアタマの先生のいる所なんて、来たくネェって!

男女交際がいけないなんて古すぎらァ!

オレの先生は女の子を好きになったらその気持ちを大切に育てろと言ってたぜ!
そうすることが強く立派な人間になるって…!

(犯人に)よくもデタラメばっかり書きやがって字だってまちがってるじゃねェか!この紙切れの為に俺たち大変なんだゾ…でも名前は言わねえぜ、恥は掻かせたくねェからな…その代わりちゃんと先生に名乗り出てくれよ!


☆つぶやき☆
当時、子供たちに限らず皆、はっちゃくの啖呵に胸がすいただろうナ…。それは今でも元気をくれるナ(^o^)この中学生の中に見栄晴さんがいるうー(笑)写真がうまくアップできません。

<愛すべき喜八、父ちゃん>

先日、柿の葉さんの日記を読ませていただき、木下恵介監督作品、花咲く港に、あばれはっちゃくの父ちゃん役、東野英心さんの父、東野英治郎さんが出演されていると知り、木下恵介ボックス第1集を持っていたので、見直して見た。


どうだろうか…面影があまりなく…失礼!…わからなかった(^o^;)この作品では若き笠智衆と日本人離れした顔立ちの上原謙の印象しかなかった。

私は好みとして、ワンシーンワンカット長回しで俳優同士のセリフ回しで人間を描く溝口健二監督や、ユーモアにとみ、端正な画面の小津安二郎監督の戦前作品が好きで、余り、木下監督は詳しく見ていなかった。

今回、柿の葉さんがご紹介下さったこともあり、改めて観賞してみた。

花咲く港は昭和18年の木下監督のデビュー作品。

二人の詐欺師が村人を騙し、造船業を興すとして、資金を集め、逃げる算段だったが、逆に村人の造船への熱い思いに打たれ、改心して自首するコメディタッチの作品。

戦局も押しつまった中でこのような牧歌的というか、娯楽性の高い内容を撮れたのに驚くが、作品の中でも太平洋戦争が勃発して、皆が一気に戦意高揚していく様は現在の目には、やっぱ不気味だ。

東野さんが演じた村人の魚業主、林田は、戦争が始まっても利益、つまり個人資本を大事にし、笠さん演じる馬車会社の社長、野羽玉から戦争に協力しない貴方はそれでも日本人か!とののしられる。

大東亜共栄圏を作りアジアを繁栄させる大義名分の戦争自体が国家資本を追求した末のことダヨナ…。資本主義を推し進めると外部への侵略や戦争を仕掛ける危険性をやはり感じてしまう。

木下監督、群衆のシーンは上手い、ダイナミックだな。人間同士の捉え方、撮り方洗練されてるナ…既に☆

さて、花咲く港で村長を演じた坂本武さん。戦前戦後の松竹作品には本当によく目にする俳優である。

私は小津安二郎監督の喜八物、と呼ばれる人情話が好きだ。そこで主役の喜八を演じるのが坂本武さんだ。
花咲く港の後に久しぶりに昭和10年の東京の宿も見た。


坂本武さんと子役の突貫小僧(左)。

現在見れる喜八物は出来ごころ、浮草物語、東京の宿、長屋紳士録の4本。

いづれも、喜八は下町育ちぽい、ちょっと粋で、酒好きで、お人好しの憎めない性格のおじさんである。

私は最近、男!あばれはっちゃくにはまってから、父ちゃんがこの喜八とかぶって見えてしまう。体型も少し太り気味なので尚更…。

寅さんシリーズにはまだはまってないが、寅さんは風来坊だが、何処と無く、そんな人柄だったと思う。

今では喜八同様、父ちゃんも私にとっては愛すべき人物だ。

<交わす>
長太郎のクラスメイトの最初の印象は悪かった。

越して来るなり、洋一と邦彦と殴りあい、こてんぱんにやっつける。

みゆきちゃんも、長太郎に裸を見られたというのもあるが、越したてで、でかい顔をして長太郎のやり方を押し付けた反発があった。
みゆきちゃんはすごく公平さを持ち合わせた少女だと私は思っていて、力でねじ伏せようとする長太郎に、合気道の試合を申し込むことでたちむかおうとした。

多分、みゆきちゃんは勝つこと前提で申し込んだのだと思うが、結果は長太郎がみゆきちゃんを投げ飛ばすことで終わった。(はっちゃく投げ〜)

何とかみゆきちゃんと仲直りをしたい長太郎は紙飛行機の手紙をみゆきちゃんの部屋に投げ入れる。

(おれがわるかったよ。ボインまだいたいかい?本当にごめんな。)

(きみは最低よ。私を投げ飛ばすなんて、ますます許せないわ。)

長太郎の手紙に微笑みながらも、長太郎に向けては冷たい表情をむけるみゆきちゃん。返事も紙飛行機。

長太郎に反発から入ったみゆきちゃんが、少し、長太郎をそんなに、嫌な奴じゃないのかな…と見直しているよう。

でも、生身で長太郎にたちむかって投げ飛ばされた時にすでに何かこころ通じるものがあったのカナ?合気道の精神で正々堂々挑んできた長太郎に礼儀も感じただろうし。

生身でぶつかりあって、こころ通いあうというか、相手を理解できるのは子供ならではかもしれない。

みゆきちゃんは反発から長太郎を知っていくが、親友になる洋一は、長太郎の言葉に素直に耳を傾け、長太郎を知っていく。

第2話でクラスで飼っていたリスが盗まれ、長太郎は皆から犯人だと疑われてしまう。

汚名を晴らす為、長太郎は真犯人を探すことにする。ドンペイにリスの匂いを嗅がせて、捜査するが、何故か洋一のところに来てしまう。


長(お前はどう見たって犯人って顔じゃねえな。)
洋(そうだろう!)

洋(君、そんなに犯人を探したいのかい?)
長(ああ、俺は男だかんなぁ。)
洋 (男?)
長 (お前たちに猪だってバカにされたって平気だけと、泥棒だって言われたら我慢できねぇんだ)
洋(ふぅん…)
長(田舎のじいちゃんがいってたぜ。男は誇りを大事にしろってな)
洋 (君って、珍しい奴だな…)

この会話がきっかけで長太郎と洋一は仲良くなったな…。因みに私の家の者は洋一がお気に入りだったナ(^_^;)。

きっかけは違えど、ほんの少し心が通っていく様を描く初期の二作は、改めて見るとみずみずしくてよいな。

はじめて言葉を交わした日の、その瞳を忘れないで…なんて歌を思い出す。

<無骨な男>

ボーダーのシマシマシャツに、短い半ズボンの長太郎を見ると、ああ、あばれはっちゃくダナと思う。小さい頃のはっちゃくの記憶はこの栗又厚さんのはっちゃくだったと思うんだよナ…。

この格好を見ると、無骨な長太郎のイメージが湧いてくる。

大雑把なのだけど、大胆で、荒療治ではあるが、ジンワリ優しさが感じられるようなそんな人柄。

しかし…冬でもこの格好…長太郎だからとはいえ、スゴすぎる。当時は今と違い、冬の冷え込みが半端なかったと記憶している。

小学二年生の頃、廊下に溢した水が次の時間凍っていて、すごく先生に叱られた記憶があり、霜焼けも茶飯事であったから。三代目の故郷、栃木。


(甘ったれるな!)
(負け犬!)
(それでも男か!?)


長太郎はよく怒鳴る。

長太郎は無骨な男だから、決してなまやさしい言葉は吐かない。

いや、怒鳴ってくれているのだ。

何かに躊躇している時、一歩踏み出せる勇気をもつように。背中をドン、と押してくれる。

それが、桜間長太郎の男らしさなのカナ。

昨今は男女の役割も混淆して、男らしさを大上段に構えることも余りないけど。この頃は、まだ潔さとか、有言実行とか男らしさの規範があったのだろうナ。

ああ、もっと心の柔らかい内に、熱心にあばれはっちゃくを見ておきたかったなあ(笑)

長太郎に怒鳴られて、せめて、少し、もうちょっとしっかりせねば、と思う…。

<大役>

男!あばれはっちゃくのDVDが完結した!

テレビドラマの宿命かもしれないが、流れたら、子供たちの心の中には残るにしても、過去の作品になってしまうから、こうしていつでも再生でき、今でも、面白さと感動を新たに与えられるDVDになって本当に良かったと思う。




初代の吉田友紀さんも二代目の栗又厚さんも、放送時はフル回転で休むことなく働いてきて、放送終了となり、ピタリと状況が変わってしまう、その時の思いはどうだったろう。直ぐに受け入れられたのだろうか?制作時は替えがきかない大役を担わされ、悪い言葉だが、目まぐるしい芸能界の流れにのまれながら、普通の学生生活を犠牲にしてきた。

写真集の中では、お二人はそれぞれ高1と中1だった。普通ならまだまだ成長の途中でこれからが人生のスタート地点。この中でははっちゃく時代を既に振り返ったり、あの人は今的な取材かもしれない。(ファンにとっては本当に嬉しいことだが。)複雑な思いもあったろう。


(吉田友紀さん)
今でも、町をあるいていると(あっ、はっちゃくだ)と声をかけられることがあるという友紀クン。はっちゃく時代の思い出を聞くと、(あの頃は、はっちゃくを演じることで、いろんなことが全部発散できて、すばらしかった)と語る。現在、彼のストレス解消法は音楽を聞くこと。どこへ行くにもウォークマン持参で好きなロックに耳をかたむける。将来は(存在感のある役者になりたい)ときっぱり!今、その夢にむかってまっすぐに進んでいる。(熱血あばれはっちゃく写真集めもりいあるばむより抜粋)

栗又さんは特に振り返る発言はないが、熱血の撮影現場によく遊びに来ていて、スタッフの人たちにきちんと挨拶をし、三代目の荒木さんとサッカーをしたり、お弁当を一緒に食べたりしていた。吉田さんは、熱血の激励パーティーに駆けつけて、(今のままのチームワークの良さと、体力でがんばれば、学校との両立もできる!)と力強くアドバイスをされた、とあり、改めて面倒見がいい、よき先輩だったのだな、と思った。

あの大人気の中で、この番組がお二人にとっては大きな支柱だったのではないかと思う。その状況が変わっても、傲ることなく、その作品を大切にしながら、真っ直ぐに未来を見ているお二人は立派だ。因みに栗又さんも将来は役者かミュージシャンになりたいとおっしゃっていた。


先日、あばれはっちゃく同窓会が開かれ、五人のはっちゃくが集われた。私はそのお写真を見させていただいて、なんとも言えず、ジーンとしてしまった。臭い言葉だが、五人のはっちゃくたちは、永遠の、仲間たちなのだな、と思った。

<可愛らしい回>


第68話あばれサーカスマルヒ作戦は微笑ましく、可愛らしい話だ。

みゆきちゃんといくはずのサーカスのチケットを紛失してしまった長太郎がみゆきちゃんの為に手作りのサーカスを見せてくれる。

なにがなんでも約束を果たそうとし、果たしたところが長太郎らしい。

おどけたピエロを演じながらも、その奥の眼差しが真摯なのである。そこがとてもいい。



第88話の戻れ!ボーナスマルヒ作戦をまた見ることができた。

カツヒコのラジコンを長太郎に壊されたと怒鳴りこんできたカツヒコの父親。上司である手前もあり、父ちゃんはそんなことは神に誓ってしていないという長太郎を素直に信じてあげられない。悔しさから泣きながら家を飛び出す長太郎。実はカツヒコが自分の不注意からラジコンをこわしてしまい、決まりの悪さから長太郎のせいにしたのだ。飛び出した先で寺山先生に打ち明ける長太郎。(先生は俺のことを信じるか)との問いに、(信じるとも。)答える先生。先生は、カツヒコにはそうしなければならない事情もあったのかもしれないし、許してやれ、自分が正しいと思ったら胸を張って帰るんだ、と長太郎に諭す。その帰り道、長太郎のジャンパーを持った父ちゃんが優しい眼差しで迎えに来ていた…。

この回、このシーンがとても好きだ。

寺山先生に(信じるとも!)と言われた時の嬉しそうな表情、迎えにきた父ちゃんを見つめる逞しい長太郎の表情が、心に沁みてくる。

<雑記>



実家に帰ると、家の者に半ば強引に男!あばれはっちゃくのDVDを見せている。
徐々に見いって楽しんでくれており、今現在でも引き込まれる魅力があるということで、ファンとしては嬉しい。

近しい者なので、思ったことを口にしてくれる。

毎回言うのが、長太郎足が太すぎる(笑)というものである。

これは、悪口ではなく、自然に出た感想なのである。
私もそう思うし、そこも好きなのだ。

二代目あばれはっちゃくの特徴はたくましい分厚い体躯であり、特に太ももの重量感がすごい。

写真集でもその記述があり、栗又さんははっちゃく向きの体型だと認められていた。

その体型に乗っているのが端正で、凛々しいフェィスなので、まるで…仏像の四天王などの武将像を彷彿とさせるというのは言い過ぎだろうか。

家の者の他の感想としては、長太郎は身体は父ちゃん(東野英心さん)似、顔は母ちゃん(久里千春さん)似だね、というものである。これは、本当にその様なのである。

男!あばれはっちゃくは102話あるので、その回きりの出演者がいて、彩りを添えている。一回だけだから印象が薄いかと思うとそうでなく、結構存在感があって残ったりする。

第3話の兄貴が思いを寄せる千春さんの弟森田てつや。決めセリフがあり、愛嬌があったと思う。(笑わせるぜ全く!)

第47話のあばれラーメンの回のサッカー部のキャプテン浜田こうじ。父親のみで、姉貴が嫁いでしまうのを素直に喜べないナイーブな少年であった。

第31話の走れ!じゃじゃ馬の回はすごく印象的な回だ。誰しも経験する短い期間だけれども、いい出会いというものをすごくよく描いている。教育実習の森下千恵子先生と長太郎とのあれこれ。

森下先生は頑固で押さえつけようとすると抵抗する長太郎に最初手を焼いてしまう。

森下先生は持ち前の行動派らしく、長太郎たちを家に招待して親交を深める。

森下先生は活発で元気で快活な性格だが、その反面、些細なことで自信を無くしてしまう面がある。とても人間らしさがある人である。

そして、本当はそうでないのに、皆に嫌われているという思い込みから、誤解し、先生になる自信までも失ってしまう。生きているとそういうことってあるなあ。

長太郎たちは、学校をでてしまった森下先生の家に行き、先生に見えるように(先生、大好き)と書いたバルーンを上げる。その長太郎たちの温かい気持ちと森下先生の嬉しさがじんわり伝ってくるのだ。