<紐解き>

第62話羽ばたけヤキトリマル秘作戦の栗又厚さん。この眼力といい、彼は本当にいい面構えだと思う。体の隅々まで生気がみなぎっているような。線がか細くなくて、この時代だからあり得た子役なのかな、と思ったりする。

この回では、沢山、はっちゃくという言葉が出てくる。原作の山中恒さんによると、知り合いのおばあさんのいなかの方言で、手のつけられないあばれんぼう、の意味だそうだ。

この回では赤城時次郎という少年が出てくる。彼は、長太郎が群馬にいたとき、中学入学にあたり、二代目あばれはっちゃくに任命した人物なのだ。あばれはっちゃくはなんと任命制だったのだ。その任命式が描かれる。

男と書かれた木片を二つに割り、同じお守りに入れ、お互いが持っている。長太郎はランドセルに付けている。

赤城さんは言う。
(はっちゃくあばれんぼうだ。だがな、正義の為にしかあばれちゃいけねぇ。)
そうか。これが規範だったのか。分からず屋を懲らしめるとか、許せないこと、人助けとか、必ず理由があって、それは赤城さんとの約束だったのだな。

赤城さん役の西山勝仁さんという子役は同時期にサンキュー先生という、小学生版金八先生と言われたドラマに出ていたそうだ。このドラマは制作国際放映、テレ朝放映、制作の落合兼武さん、山際永三監督、脚本山根優一朗さんが関わり、出演者も吉田友紀さん、浅川薫さんなどかぶっている。はっちゃくの任命だから、吉田友紀さんがファンとしては嬉しかったかもしれない。役の成長具合や、後の桜島ロケ出演が決まっていたとか、多忙であったとか、理由があったのかな、と思った。

赤城さんと長太郎のやり取りから、はっちゃく憲法?があることも判明する。

第1条、常に希望を持て。
第2条、泣きごとを言うな。
第3条、むやみに人の世話になるな。

どれも、シンプルだけど貫くことは難しい。今の自分になんとも喝を入れてくれる言葉だ。

長太郎は寺山先生から呼び出され、夜に神社で賭けメンコをして子どもたちからお金を巻き上げていたと誤解される。

それは、あの、赤城さんと共通のお守りが落ちていたからだった。

(あいつだ、間違いない!)
長太郎は偶然、公園で赤城さんを見つけると殴りかかる。

(はっちゃくの名を汚しやがって許せねえ)
(正義の為にしかあばれちゃいけねぇっていったのは赤城さん、あんたじゃねぇか!)

話を聞くと、赤城さんは入院した母親の入院費を稼ぐ為に東京出稼ぎにきた父親を探しに東京に出てきたのだ。だが、手懸かりをなくしてしまい、3日も食べてないことから、仕方なしにしたことだった。

長太郎は父ちゃんから、赤城さんを不良と決めつけられ言う。

(赤城さんは不良なんかじゃないやい!立派なはっちゃくだい!)

赤城さんの父親が見つかった。ヤキトリの屋台を牽いて稼いでいた。だが、置き引きに遭い、後2日で母親が病院から出されてしまうのに、後、5万円足らない。


(ひらめいた!)


赤城さん親子を病院に出向かせ、その間、長太郎たちが屋台を切り盛りする。

そして、赤城さんが父親に電車でいう。

(あいつは立派なはっちゃくだよ。)

他を見ていないので分からないが、二代目は、様々な商売に自らチャレンジする。ヤキトリ屋台、ラーメン屋台、年末のお飾り売り、焼き芋屋台、チンドン屋さん、特許申請中の工作機械の叩き売り等。どれも、生活を直接支える、左右する、暮らしそのもの、といった商いだ。

それは暮らしをつないでいく、生きることを粗末にしていないということ。それは自営の母ちゃんを見ていたからだろう。稼ぐこと、生活することが一体になった逞しさ。

赤城さんの最後の、あいつは立派なはっちゃくだよ、は、しみじみと響いてくる。暴れるだけでないはっちゃくの姿を長太郎に見たのだ。ここで、心から感服し、名を譲った、という感じがする。